日本生態学会誌
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総説
植物の資源利用効率と環境要因 : 水と栄養に着目して
塩寺 さとみ北山 兼弘
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2015 年 65 巻 2 号 p. 87-108

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抄録

栄養塩と水が不足する環境では、これらの資源をどのように利用するかということが植物の成長や繁殖に影響を与え、ひいては植物の生死を左右する要因となる。光合成における栄養塩や水の利用は経済学になぞらえられ、栄養塩利用効率(NUE:nutrient-use efficiency)、水利用効率(WUE:water-use efficiency)(本稿ではこれらを合わせて資源利用効率と呼ぶ)としてこれまで盛んに研究が行われてきた。高いNUEとWUEをともに実現することは、限られた資源を用いて効率的に光合成を行うため、ひいては生産した同化産物による成長や繁殖を行うために、植物にとって非常に重要である。これらの資源利用効率は、植物の生育環境によって影響を受けるとともに、植物の葉や材などの生態学的、生理学的な特性とも密接に関連している。植物は通常の生活においても環境ストレスに晒されている。土壌栄養塩や降水量、標高といった植物の生育環境による外的要因、樹高による水ストレスの違いといった内的要因など、自然界には様々なストレス勾配が存在する。これらのストレスに対し、植物はその環境に適した形態学的、解剖学的、生理学的特性を維持しつつ、同時に資源利用効率を高める成長戦略をとっている。このため、資源利用効率は、ストレス下で生育している植物におけるその環境への適応の指標であるといえる。本稿では、植物の資源利用効率を鍵として、水、栄養塩(主に窒素とリン)といった資源の欠乏が植物にどのような影響を及ぼすのか、また、限られた資源を効率的に利用するために植物がどのような生態学的、生理学的機構を発達させ、資源利用効率を高めているのかについて考察する。

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© 2015 一般社団法人 日本生態学会
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